代官山日乗

自覚さえすればどんな生活にだって深い意味が出来る。

代官山日乗ーはじがき

代官山に住んで八年になる。

ちょっとした腰掛けのつもりがこれまでで一番長い街になった。

そろそろ引っ越しをと考えはじめたら、ここでの記憶を残しておきたくなった。

 

旅をするように暮らしたいと若い頃に思った。どこにも根を下ろさず、街から街へ移動していろんな場所を見てみたい。バッグパッカーを終えても旅する心を忘れたくなかったのだと思う。それに同じ場所にいると様々なものがたまってくる。古い雑誌や小さな人間関係が澱のようにたまって動きが不自由になる。気に入った場所であっても時がくれば新たな場所に移る、そんなことを一年か二年おきに繰り返してきた。

 

この街に長く住んだのは自分に合っていたからだとは思わない。そもそもここに決めたのも偶然みたいなものだし、私が代官山に住むというのは今でも一つのジョークのように思える。もし理由があるとすれば、この八年間随分旅をした。仕事で海外を周り、長い休みをとって何ヶ月かアラスカに滞在もした。旅から旅への暮らしの中で、同じ場所に帰るというのは一つの句読点のようなものだったのだろう。

 

長く住めばやはり土地に愛着めいたものもわいてくる。最初の物珍しさが去って見慣れた風景が日常になっていく中で、私は私なりにこの場所に馴染んでいった。代官山のオシャレスポットを紹介するというブログにはならないだろうが、日々のうたかたを記す漫筆としたい。