代官山日乗

自覚さえすればどんな生活にだって深い意味が出来る。

「ブルックリン・フォリーズ / ポール・オースター」はどんな人が読むべきか?

30才、あるいは60才前後の人生に希望を失いつつある人 将来に期待せず、今に満足もできないある種の挫折を抱えた人たちが偶然の出会いからそれぞれの人生を動かしていく話です。ものすごく前向きにはならなくても偶然を待ってみようかなという気にはなると…

VUCA - 予測不可能性な未来に対処する(メモ)

VUCAはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまいさ)の頭文字をとった用語で、最近米国などで使われだしている言葉だ。 なにがVUCAなのかといえば、もちろん世界だ。 そのような世界において、決断を下し…

シュルレアリスムとは何か/巖谷 國士を読む

シュルレアリスムはシュール・レアリスムではない。 ここでいうシュールとは超と訳されるが、現実を超えたということではなく、強調の意味の「超」だ。ちょーすげー、のちょーと同じ使い方がされている。 ものすごい現実、それが時に目の前に現れてくるのを…

藤田嗣治と愛書都市パリを観る

松濤美術館で「藤田嗣治と愛書都市パリ」を観る。 19世紀末から20世紀の初頭にかけて挿絵本の世界が大きく花開いた。 多くの画家が華麗な本作りを手がけ、愛書家(ビブリオフィル)たちが熱心に収集し、自分好みの表紙をつけて家に飾った。 本展覧会は2部に…

ブッツィ(Tillandsia butzii)

ブッツィの良さは名前が覚えやすいことと、独特の葉の模様だ。 植物らしくない一見ヘビの皮みたいなパターンが根元から葉の先まで延々と続いている。あまり葉数が多くなく、太くてどっしりしたのがゆっくりうねりながら伸びていて、そちらもさらにヘビ感を盛…

本屋の背骨

通販で本を買うのが好きではない。配達の時間に家にいなければならないことや、馬鹿げた箱の始末にうんざりすること、それに以前書いたように地元の書店を応援すべきだと思うのも一つの理由だ。 今日はモンテーニュのエセーを読みたくなったので、原則にした…

人の行動を決定する3つの要素について

人の意思決定は主に感情が影響し、論理がそれを補強したり検証したりする。 いくら理屈が通った話でも感情が働くー快の報酬につながらなければ人は意思決定しない。物を売るには商品の価値だけでなく、ストーリーが必要なのはそのせいだ。 一方で意思決定さ…

魂の錬金術ーエリック・ホッファー

7歳で失明し、15歳で奇跡的に視力を取り戻し読書にふけるようになる。18歳で天涯孤独の身になり、肉体労働者あるいは放浪者として一生の大半を過ごす。ホッファーの生涯はエピソードに富んでいて、それそれ自体が一つの物語のようだ(すばらしい自伝が…

ゲンズブール/太陽の真下で Sous le Soleil Exactementを和訳してみた

Serge Gainsbourg - Sous le Soleil Exactement あまりにも暑いのでSoul le Soleil Exactementを訳してみた。 ス・ルソレイユ・イグザクトモンと発音する。短いタイトルにス、ソ、ザとサ行がリズム良く入っていて耳に心地よい。ゲンズブールの詩は音がなくて…

ひとりよがりのものさし

なじみのギャラリーで今度、松濤美術館で開催される「古道具、その行き先」という展覧会を紹介された。 いわゆる李朝とか古伊万里でなく、様々な古道具を見立てで美を見つけるという先駆者の方だと聞いてがぜん興味がわき、店主の坂田さんの出されている本を…

仕事を休んでマウリッツハイス美術館展を見なかった記

仕事を休んで東京都美術館にマウリッツハイス美術館展を見に行った。 こちらに書いたようにあの絵との再開をすごく楽しみにしていたので、上野の公園を歩きながら胸が高鳴るのを感じた。美術館につくと係の人が最後尾は30分待ちと書かれたプラカードを掲げ…

TOMSの靴 靴とお金と社会貢献

近所の店でTOMSの靴を買った。 キャンバス地で軽く、インソールもアーチの部分に工夫があり歩きやすい。 ここの靴を一足買うと海外の靴のない子供たちに靴が一足プレゼントされる仕組みになっている。One for Oneというこのコンセプトはシンプルで力がある。…

役に立たない代官山ガイドブック:駅前の珈琲屋台

代官山で一番好きな風景の一つ。 どこへ行くのもほとんど徒歩だし、たまに電車に乗る必要がある時は渋谷駅を使う。 8年住んでいて、代官山駅は数えるほどしか使ったことがない。駅に来るのはここのコ珈琲を飲むためだ。 駅前の駐車場にとまった小さなバンと…

風呂上がりのカプト・メデューサ(T. caput-medusae after bathing)

チランジア・カプトメデューサをソーキングの後、風にあてて乾かしている。 チランジアはたくさんの種類があるが、大体、熱帯の森林地帯などで樹木などに張り付いて暮らしている。といっても寄生しているわけではなく、根はほとんど発達していない。ただ申…

ミッドナイト・イン・パリ

ウッディ・アレンの映画は恵比寿ガーデンシネマで観るのが毎年の習慣だったが、あそこがなくなってどうも勝手が変わった。あれほど楽しみにしていた新作もなんとなく足を運ぶのが億劫になっていたが、今回は違う。 1920年代のパリのアメリカ人がテーマです…

仕事帰りにバーン=ジョーンズ展へ行く

仕事帰りに三菱一号館で開催中のバーン=ジョーンズ展を観る。 夕方6時以降は割引という粋なはからいの恩恵にあずかり、1000円也を支払う。 パーン=ジョーンズは遅れて来たラファエル前派といってもPRB(Pre-Raphaelite Brotherhood)ではなかったし、画風…

マウリッツハイス美術館とフェルメール

ちょっとした事情があってパリを出なければならなくなった。とりあえずアムステルダムまで行くことにして、気が向いた場所で途中下車でもするかという軽い気分で旅に出た。 デンハーグに降りたのは寝台列車がちょうど朝に着いて少し歩きたかったからだ。近く…

代官山蔦屋書店デ万年筆ヲ買フコト

東京ほどセレクションの多い街はない。手間さえかければ世界中のほとんどのものが手に入るし、その手間も実はそれほどたいしたものではない。難しく、時間がかかり、楽しくもあるのは何を選ぶのかという選択にある。必要なのは自分なりの見識で(それも借り…

日本発の緋牡丹錦(Gymnocalycium mihanovichii "Hibotannishiki" from Japan)

鮮やかな赤や優しい黄色が織り成す模様の間に深い緑の地が垣間見える。雄雄しい刺や様々な形状、サボテンの魅力は色々あるが色彩の美しさならこの緋牡丹錦は五指に入るだろう。 本来緑である部分に別の色が入ったものを斑入り(ふいり)という。突然変異によ…

代官山日記:セール、セール、セール!

朝カメラを持って散歩していたらセールの文字ばかり見つけたので写真を撮った。 近頃のセールは早く始まって随分遅くまでやっている気がする。 セールの表現も色んなのがある。 SOLDESって最初フランスに行った時は意味がわからなかった。 でも最近の人は日…

ふたりのヌーベルヴァーグ

ふたりのヌーベルヴァーグ / 監督:エマニュエル・ローラン 2010 パリで学校に入って最初の自己紹介で映画が好きだ、特にヌーベルヴァーグと言った。 それからことあるごとに教授から「君、ジャン・ユスターシュのママと娼婦は何年だったかね?」といった質…

奇鈔百圓と二つのコイン

江戸時代、天明六年(1786年)初出の奇鈔百圓という古銭書。 地唄の作曲家で古銭研究家である河邨羽積(かわむらはづみ)が著した。 中身は今でいうコインカタログで多くの古銭の拓本が並んでいる。面白いのは外国コインがいくつか紹介されていることでモゴ…

セーヌ左岸の恋 / エド・ヴァン・デル・エルスケン

LOVE ON THE LEFT BANK / Ed van der Elsken エルスケンを知ったのは高校時代に出会った「巴里時代」という写真集だった。 セーヌ左岸の恋を再構成したものだ。 その中にエルスケンのセルフポートレートがあった。 私は知らない土地で暮らすことに憧れ、東京…

千波万波(Echinofossulocactus multicostatus)

美しいサボテンといえばこの株だ。 たくさん稜がでるという意味のムルチコスタータだが、千波万波(せんぱばんぱ)という和名で呼びたい。 エキノフォスロカクタスの中でも抜群に稜が多いこのサボテンはまさに寄せては返す波のように複雑な表面をしている。…

花が終わったブラキカウロス(Tillandsia Brachycaulos after blossom)

エアプランツは茎が極端に短く根を持たない。空中の水分を葉から吸収して成長する。 恐竜みたいな名前のこのエアプランツは、名前に似つかわしくない清楚な紫の花を突然咲かせ、短い出張から帰ってくるとまた突然花を終わらせてしまった。 花が終わってから…

役に立たない代官山ガイドブック 朝日屋

代官山で一番良く行く店といえば、そばの朝日屋だ。 そもそもこの辺りには本気の飲食店かコンビニしかない。そしてそのコンビニもつぶれてしまった。暮らすというのは何もない日常を繰り返すことで、毎度毎度洒落た飯を食べるわけにもいかない。その点朝日屋…

ベランダのアロエ・鬼切丸(Aloe marlothii)

アロエと言えば、ヨーグルトに入ったりしてヘルシーな植物のイメージがあるが、この鬼切丸はどうだろうか。 固く締まった肉に鋭い刺を持ち、脇の葉は枯れてなんだが古豪の風格がある。 和名の鬼切丸は大江山の鬼退治に使われた刀の名前からきている。酒飲み…

烏羽玉の(Lophophola williamsii)

烏羽玉は黒や闇にかかる枕詞だ。しかし、この刺がないぼやっとしたサボテンは全然黒くなく、白っぽい緑色をしている。たくさん子を吹く性質で気がつくと新しいのが出ていたりしてのんきに見えて意外に活力も旺盛だ。 察するに、このおどろおどろしい和名はこ…

ラウシー群生 (Rauschii forming clumps)

花が終わったラウシー。 細い台木の上で大小の個体が群生している。昔からある大きなものは後から出てきた新しい小さな個体に押され、端のほうがひしゃげ白く変色している。そのため、この株の特徴的な赤とグリーンに白が加わり、複雑な色相を見せて面白い…

代官山蔦屋書店 既視感につつまれた空間で考えたこと

結局引っ越していない。 面倒だがやる必要があることは、やる必要はないがとてもやりたいことにいつも負けてしまい、前の投稿から半年以上たった。ブログを書くというのはやってみたいが面倒なことで両者の中間に位置する。さすがに引っ越しの準備を始めない…