代官山日乗

自覚さえすればどんな生活にだって深い意味が出来る。

日本発の緋牡丹錦(Gymnocalycium mihanovichii "Hibotannishiki" from Japan)

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鮮やかな赤や優しい黄色が織り成す模様の間に深い緑の地が垣間見える。雄雄しい刺や様々な形状、サボテンの魅力は色々あるが色彩の美しさならこの緋牡丹錦は五指に入るだろう。

 

本来緑である部分に別の色が入ったものを斑入り(ふいり)という。突然変異による葉緑素の欠落がその原因だが、日本の古典園芸の世界では特に珍重されてきた。植物の増やし方は種子を採取し蒔く方法と、挿し木や株分けで増やす方法がある。後者の場合は遺伝子的にまったく同じものができるので元になった植物と違いはない。品種改良とは考え抜いた交配により種子をとり、稀な突然変異を待つことで意図に沿った性質を得て、クローンによって定着させていく作業だ。

 

この品種は日本発である。昭和17年に渡辺栄次氏によって作り出され世界に広がっていった。一万粒もの種から見つかった数粒の赤みがかった幼苗を、芯えぐり、接木、胴切りなどのあらゆる技術を使って増やしたのだ。美しい色の代償に葉緑素が少ないこのサボテンを育て上げるには大きな苦労があったと察する。実際、全体が赤い緋牡丹は光合成ができないため接ぎ木でしか生きることができない。

 

私はこのサボテンを見るたびにその複雑玄妙な美しさに魅了されると同時に、人が美しいものを作り上げるための努力に敬意を覚える。少ない葉緑素で今日もがんばって光合成している緋牡丹錦にも。

 

学名 Gymnocalycium mihanovichii v.friedrichi cv.Hibotannishiki

学名 ギムノカリキウム ミハノヴィッチ ヒボタンニシキ

科名 : サボテン科

原産地 ボリビア・パラグアイ